suga's blog 徒然なるままに
とりとめのないことを、徒然なるままに、書き留めておこうかと思います。

弱者しわ寄せ 繰り返すな

発言 私の選択
弱者しわ寄せ 繰り返すな
「暮らしと経済研究室」主宰 山家悠紀夫さん

 米国発の金融危機は、まだ入り口です。株の大暴落に波及、実体経済への本格的な影響は、これからです。

矛盾の再生産

 金融危機の背景には、世界的な「カネ余り」があります。もうかる場所を探して、カネが動き回る。マネーの暴走です。

 「かね余り」がどこから生まれたのか。1970年代にドルと金との関係が断ち切られ、ドルが独り歩きするようになります。

 80年代には、米国の経常収支が赤字になり、どんどん膨らむ。ドルが、なぜか世界通貨となり、世界中にばらまかれ、歯止めがかからなくなる。一方、財政赤字で財政政策が使えなくなり、過度に金融政策に偏ります。景気が悪くなれば、金利を下げて賃金を供給する。

 加えて金融自由化です。米国は世界的に金融の規制緩和を迫り、賃金が国境を越えて自由に動き回れる環境をつくる。銀行と証券の兼業禁止も取り払われていきます。国民の預金を危険にさらし、銀行の信用を失うという1929年恐慌の教訓は、生かされなくなります。

 いま、余り過ぎた資金を吸収すれば、食料や原油の値上げに歯止めがかけられるはずです。しかし、こげついた金融機関が資金調達できないからと、世界各国が金利を下げて資金供給する。矛盾の拡大再生産です。

 金融危機を受けて、日本政府がやろうとしている追加景気対策はピントはずれです。投資機会がないのに、設備投資減税をしても意味がありません。証券市場の取引を税制で優遇するのも論外です。株取引でもうけが見込めないのに、活性化するはずがありません。世界中が、証券化を反省している時に、「貯蓄から投資へ」と証券化市場の整備を図ろうとする。逆行です。

個人消費こそ

 日本経済のほんとうの問題は、国内需要が弱いことです。物価上昇でますます消費が弱い。だから、米国の景気が傾き輸出が伸びなくなると、とたんに景気が悪くなる。

 国内総生産(GDP)に対する需要の55%は個人消費です。輸出は17%です。個人消費が強くなれば、輸出の落ち込みはカバーできます。税制では企業に負担を求め、家計の負担を軽くすることです。企業活動としては、正社員を増やし、賃金を引き上げ、所得を企業から家計に移すことです。

 こういう転換を主張しているのは、共産党しかいないんです。もっと大きくなってほしいですね。大企業や大手金融機関の救済が優先されてきたのが、これまでの自民党の政治でした。民主党も政治姿勢は同じです。小泉内閣の不良債権処理策では、多くの中小企業が「不良債権」扱いされ、働く人たちが、放り出されました。今回の金融危機への対応でも、弱者へのしわ寄せが繰り返されては、なりません。

 やんべ・ゆきお 1940年生まれ。第一勧業総研専務理事、神戸大学大学院経済学研究科教授を経て、「暮らしと経済研究室」主宰。著書に『「構造改革」という幻想』『景気とは何だろうか』『暮らしに思いを馳(は)せる経済学』など。

 聞き手 渡辺謙/写真 浜西重利(しんぶん赤旗2008年10月17日付1面B版)
posted at 11:18:01 on 10/19/08 by suga - Category: Politics

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