suga's blog 徒然なるままに
とりとめのないことを、徒然なるままに、書き留めておこうかと思います。

とにもかくにも

落合恵子 積極的その日暮らし
とにもかくにも

 とにもかくにも、年の暮れ、である。「とにもかくにも」に、万感の思いをこめる。

 この寒空の下、職を失い、寮を出なければならなくなったひとたちはどうすればいいのか。そのひとたちの向こうに、介護が必要なお年寄りの顔が見える、子どもたちがいる。株主には配当しながら、つまり利益は出しながら、それでも働くものをきるのか。小さな会社を32年間、「とにもかくにも」やってきたわたしには、論外としか思えない。

 1月から11月までで過去最悪を記録した上場企業の倒産件数。件数だけでは、ひとは見えない。無機的な数字の向こうには、ひたすら職務をまっとうしてきたひとりひとりと、その家族がいる。

 海外にも名を馳(は)せた企業が、次々に社員や期間労働者の「整理」を発表している。「それならうちも」の流れが、これでできてしまう恐(こわ)さ。その流れに乗ることが、「資本主義」であるような。会社そのものを守るためなのかもしれないが、「とにもかくにも」会社を支えてきたのは、働くものひとりひとりの力だったはずだ。

 未曾有(みぞう)の不況下、町工場などの中には、社長自らが他に働きに出てなんとか給料を工面するケースも少なくない。いいことかどうかはわからないが、その必至さ、切実さが働くものの納得と結びつくのではないか。「社長があそこまで頑張っているのだから」と。

 20年前の12月、消費税法が成立した。その20年後、2008年はどんな年であったと回顧されるか。いまこの時代の、ひとりひとりの痛みを忘れてはならない。と、天衝く怒髪のまま、迎える年の瀬。

 少しはましな年にしたい、2009年まで5日。年の瀬に交わす、「よいお年を」という挨拶(あいさつ)が、喉(のど)の奥に止まっている。

 「とにもかくにも」わたしたちは生きていかなくてはならない。だから、今年最後のこの連載に、「とにもかくにも」書くしかない、よいお年を、と。(作家)(朝日新聞2008年12月27日付生活25面12版)
posted at 08:54:16 on 12/27/08 by suga - Category: Main

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