suga's blog 徒然なるままに
とりとめのないことを、徒然なるままに、書き留めておこうかと思います。

違憲判決 市民が生かす番

発言09 憲法を考える

違憲判決 市民が生かす番

元「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会」代表 池住義憲さん

 昨年4月に名古屋高裁が出した自衛隊イラク派兵を違憲とする判決は、2つの内容を含んでいます。


 いけずみ・よしのり 1944年、東京都生まれ。立教大学卒。世界YMCAベトナム難民救済・復興協力事業でベトナム・サイゴン(現ホーチミン市)においてサービスワーカーとして勤務。NGOでの活動、南山大学講師などを経て、現在、立教大大学院教授。



行動したから

 1つは、行政府の行為の一部を、司法が、他国がおこなう戦争への加担・協力であり憲法違反、と断定したことです。しかも9条1項に違反しているとしています。こうした判決が確定したのは、現憲法が施行され61年目で初のことです。判決は歴史的です。

 2つ目は、判決後、少し時間が経過して、もっとすごいものがこの判決に入っていると実感しているものです。それは、平和的生存権を具体的な権利として認めたことです。

 判決は、平和でなければ、憲法の第3章に書かれているすべての権利が、制限、否定される、つまり、平和であること、平和のなかで生きることはすべての権利のもとになると言っています。戦争に加担・協力しないことも平和的生存権だとした判決で、これはすごい。憲法を守り、生かすこれからの運動の大きな「武器」になると確信しています。この判決をどう使い生かすのか、今後は、私たち市民の出番です。

 提訴したとき、「勝つのは無理」「平和訴訟はだめなのじゃないか」などの反応がまわりで少なからずありました。しかし、結果は、実質的な勝利判決です。勝ち取った要因は数ありますが、おかしいと思ったら声に出し、提訴という行動に移したからということをまず挙げたい。

1年もたたず

 判決から1年もたたないうちに、ソマリア沖の海賊問題が浮上しています。「海賊対処」を口実に、海上自衛隊の護衛艦が現地で活動し、海外派兵を恒久化する法案が国会で審議されています。

 ソマリア沖の問題はしかし、海の問題ではなく、政治、経済、そして保安体制が壊滅させられた”陸”の問題です。ソマリアでは、英国とイタリアによる分割植民地支配を終わらせた1960年の独立後、今度は東西冷戦構造下で米国とソ連が武器を供与し、91年以降は内戦となり、無政府状態が18年続いている。これが海賊をせざるをえないという状況を招いており、海賊問題は国際社会、とりわけ先進国に責任があると言えます。

 海賊の犯罪行為を武力で抑えるため軍事的対応を突出させるのは、本末転倒です。

 日本は90年代に、東南アジアのマラッカ海峡において、海賊対策で財政、技術援助を沿岸諸国におこない、海賊行為を激減させた経験をもちます。憲法9条を持つ国として、非軍事対応での海賊対策を講じるリーダーシップがとれるのです。

 「海賊対処」の新法案では、武器使用基準が大幅に緩和されています。イラク派兵違憲判決は、イラクでの、米兵と物資の輸送について憲法違反だと判断したものですが、今回は、より直接的な武力による威嚇、武力の行使につながります。イラクのケースでも踏み込んでいなかったものです。

 名古屋高裁判決の後、全国で400回近く判決に関する報告講演会がおこなわれ、現在も続いています。そのなかでも、ソマリア沖への自衛隊派兵について、問題点を市民の間に広めていきたいと思います。聞き手 遠藤誠二/写真 橋爪拓治(しんぶん赤旗2009年5月6日付1面B版)
posted at 11:18:30 on 05/06/09 by suga - Category: Politics

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