suga's blog 徒然なるままに
とりとめのないことを、徒然なるままに、書き留めておこうかと思います。

政治ジャーナリズムの堕落

波動

政治ジャーナリズムの堕落

醍醐 聰

 小沢一郎氏が開いた民主党の代表辞任の記者会見の模様を民放のニュースで見ていたら、最後のあたりで「この際、離党あるいは議員辞職という選択肢はあるのか?」という質問が飛んだ。小沢氏の表情はにわかにこわばり、「なぜ離党、議員辞職しなきゃいけないんですか」と仏頂面で問い返していた。

 それから2週間後の5月25日付「朝日」の<beワーク>欄で池上彰さんがこの会見の模様を「露呈した番記者との関係」というタイトルで論評している。池上さんが参照した「Business Meida誠」に掲載された会見録を調べると、前記の質問をしたのは小沢番ではない日本テレビのキャスターだった。小沢氏はこのキャスターにこう聞き返している。「あなたどこだっけ、会社?」。よそ者かと言わんばかりの問いである。

 確かに、それまでは「衆議院選挙以降、代表が中心になって選挙態勢を組んできたわけですから『選挙についての責任を持つような立場についてほしい』という要請があった場合、受けるおつもりはありますか?」(「毎日」)とか、「西松報道以来、バッシングもあったでしょうが、同時に小沢総理を求める声も多数あったと存じます。私も地方を取材していて、多くそういう声を聞きました。『その声に応えられなかった』という無念の思いはあります?」(フジテレビ)とかいった、よいしょの質問が続いた後だけに、前記のキャスターと小沢氏のやりとりは番記者と政治家との近すぎる関係を際立たせた。

 一般に質疑の質を左右するのは相手の議論の核心を射る問いである。だからこそ、優れた回答よりも優れた質問が尊ばれるのである。まして相手が公権力を担う政治家となれば、権力行使のありさまに迫り、おざなりの言い逃れを許さない切り込みが求められる。取材対象の政治家に取り入ろうとするかのように独演ほう助の質問をするのでは政治ジャーナリズムの堕落も極まれりである。
(だいご・さとし NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ共同代表・東京大学教授)(しんぶん赤旗2009年6月21日付テレビ・ラジオ8面)
posted at 18:12:17 on 06/22/09 by suga - Category: Politics

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