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【コラム】アップルの「Lion」、パソコンとタブレット融合させる未来見据えたOS

【コラム】アップルの「Lion」、パソコンとタブレット融合させる未来見据えたOS

2011年 7月 21日 14:27 JST

 米アップルはスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」とタブレット端末「iPad(アイパッド)」の発売によって、マウスやスクロールバーではなく、指の動作を用いた直接的な操作を中心とするデジタル端末の新たな操作方法へとユーザーをいざなった。アプリアイコンは画面中央に並べられ、ファイルシステムの奥に埋もれたり、画面下部のバーに押し込められたりはしていない。

 アップルは今度はこうしたコンセプトをパソコンにも持ち込もうとしている。それを可能にするのが、過去数年で最も大胆な改良が加えられた同社のパソコン「Macintosh(マッキントッシュ、通称マック)」向け基本システム(OS)の最新版「Lion(ライオン)」だ。20日に29.99ドル(日本向け価格は2600円)で発売された。

 ライオンは、パソコンとタブレット端末やスマートフォンなどのポストパソコン時代の端末の融合に向けた大きな第一歩となる製品だ。ウインドウやドキュメントの右サイドに表示される従来のスクロールバーは出番を減らされ、主に直接的な操作に取って代わられている。

 作業中のドキュメントはいちいち保存する必要がなく、どのドキュメントも編集が行われるたびに自動的に保存される。プログラムを途中で停止した場合も、停止する直前の画面から瞬時に再開が可能だ。

 プログラムや、アプリアイコンの一覧はフルスクリーンモード(画面領域一杯に表示すること)で表示することも可能で、複数のアプリをフルスクリーンで同時に開いて切り替えながら使用することもできる。マルチタッチ機能が向上し、多くの操作がタッチ動作で可能だ。

 ライオンは、マックをタブレット端末に変ぼうさせるものではない。通常のファイルシステムやマルチウインドウ、マウス、物理キーボードなど、小型端末にはない従来のパソコン機能は保持されている。

 従来のマック向けプログラムも実行可能で、米アドビの動画技術「Flash(フラッシュ)」にも対応しているが、アイフォーンやアイパッドアプリは実行できない。タッチスクリーンは採用しておらず、指での操作はこれまでどおり主にタッチパッドを使用する。

 だが、大きな変革をもたらすOSであるのは確かだ。

 筆者は4台のマックでライオンの試用テストを行ったが、気に入った。250の新機能の多くはマックの操作性と信頼性を向上させるものだと感じた。アップグレードも簡単で、既存アプリとの互換性も非常に良好だった。

操作の慣れ
 だが、欠点もある。筆者の見解では、最大の欠点はライオンへの切り替えには、ベテランのマックユーザーでも慣れるのに時間がかかることだ。ただし、アイフォーンやアイパッドのユーザーにとってはそれほどでもないだろう。

 最も大きく変わった点の1つがスクロール方法だ。画面を上に送るには、スクロールバーを下に移動させたり、タッチパッドを指で下方向に払うのではなく、その逆の動作をする。タッチパッドを指で上方向に払うのだ。スクロールバーは、スクロール操作をしているときにだけ表示される(古いプログラムでは従来のスクロールバーが表示される場合もある)。

 標準プログラムやアップルメールなどの標準機能もかなり変わっている。キーボードのショートカットをはじめ、OSのほぼあらゆる点に細かい変更がみられる。新しい、または変更されたタッチ操作をすべて習得するには時間がかかるだろう(ただし、タッチ操作で行うほぼすべての処理がマウスやアイコン、メニューコマンド、キー操作でも可能だ)。

 こうした変更がうっとうしいユーザーに対しては、設定を従来のスクロール操作やメールレイアウトに戻したり、タッチ操作を使用不可能にするサービスも提供されている。

アップグレード
 もう1つの大きな変更点がライオンの配布方法だ。ディスクでは販売されず、最初にマック向けアプリ販売サイト「Mac App Store(マック・アップ・ストア)」からダウンロードする必要がある。

 ライオンのファイルはサイズが4ギガバイトもあるので、高速インターネット環境がない場合は大変だ。そうしたユーザー向けには8月にUSBメモリー版が69ドルで発売される予定。

 筆者のテストでは、かなりの高速接続を使用した場合でもダウンロードだけで30分近くかかり、標準的な接続環境では約1時間半かかった。ダウンロードを終えたあとも、インストール作業にさらに約1時間を要した。

 またライオンに直接アップグレードできるのは、前バージョンのOS「Snow Leopard(スノーレパード)」からだけだ。それ以前のバージョンのOSを使用している場合は、まず有料でスノーレパードにアップグレードする必要がある。

 さらに、パワーPCプロセッサーが搭載されたマックではライオンは実行できず、インテル製プロセッサーが搭載されたものでも初期の機種の一部では実行できない。特に06年に発売されたものがそうだ。

 また、もともとパワーPC向けに設計された古いプログラムはスノーレパードでは実行可能だが、ライオンでは実行できない。

移行
 スノーレパード搭載のマックを既に持っていて、さらにライオンがあらかじめインストールされた最新のマックを購入する場合でも、古いマックのプログラムや設定、ファイルをすべて新型マックに移行するには、アップルの移行プラグラムの最新バージョンをダウンロードする必要がある。この新しい移行プログラムは19日に配布が開始されている。

 筆者も、現行の移行プログラムを使用してスノーレパード搭載機種からライオン搭載機種への移行を試してみたが、うまくいかなかった。アップルに新バージョンのプログラムを送ってもらい試したところ、うまくいった。

 ライオンには、米マイクロソフトのOS「Windows(ウィンドウズ)」搭載パソコンからマックにデータや設定を移行できる新しい移行機能も用意されている。ただし、それには無償配布されるウィンドウズ移行ユーティリティーが必要になるが、このレビューの時点ではまだ配布は行われていなかった。

新機能
 以下に挙げるのはライオンの主な新機能だ。

オートセーブとバージョン
 ライオンで実行しているアプリでは、作業の手を止めたとき、または5分ごとに自動的に作業内容を保存してくれる。自動保存処理の間も作業を中断する必要はなく、手動での保存も可能だ。

 自動保存自体は新しい機能ではないが、非常にうまく実装されている。現在はアップル製のプログラムの一部でしか使用できないが、今後ほかのプログラムでも対応が進めば使用できるようになる可能性がある。

 この機能の最も優れた点は、1時間ごとに新しいバージョンが作成され、それらすべてのバージョンを現行バージョンの隣に時系列で連続表示できることだ。古いバージョンに切り替えたり、テキストの一部をバージョン間でコピー&ペーストしたりもできる。

 ドキュメントにロックをかけて自動保存できないようにすることも可能だ。ドキュメントを共有したり、転送する場合は、最新バージョンだけがコピーまたは送信されるため、プライバシー保護に役立つ。

再開
 作業の途中でプログラムを一度閉じて再開した場合でも、閉じる直前の画面が表示され、カーソルも元の場所に配置される。この機能を使用不可能にする設定を行わない限り、マックを再起動した場合、プログラムはすべてこのような状態で再開される。

フルスクリーンアプリ
 画面右上部のアイコンをクリックするだけで、一部のアプリやブラウザーの個々のタブをフルスクリーンモードで表示できる。フルスクリーンモードでは、画面上部にカーソルを移動しない限り、メニューバーやその他のコントロールバーは表示されない。

ローンチパッド
 新型マックの場合は特別なキーを、古いマックの場合はアイコンをクリックすると、アイパッドのようにフルスクリーンモードでアプリアイコンが一覧表示される。アイコンが多くて1画面に収まり切らない場合は、画面を上に送ればいいだけだ。

ミッションコントロール
 マックの優れた機能の1つに「エクスポゼ」がある。これは、開いているすべてのウインドウをワンクリックでサムネイル表示できるものだ。ライオンでは、エクスポゼが「ミッションコントロール」という新機能に組み込まれている。ミッションコントロールでは、ウインドウに加え、フルスクリーンアプリやデスクトップも一覧表示される。筆者は、画面が雑然として見えるため、もっとシンプルなエクスポゼの方がいいと感じた。

マルチタッチジェスチャー
 マックではこれまでもタッチパッドを使用して、アイフォーンのように指でさまざまな操作を行うことはできた。だが、ライオンではさらに操作方法の改善や新たなタッチ操作が加えられている。

 なかでも筆者が気に入った点は、アイフォーンやアイパッドのように2本の指でパッドをダブルタッチするだけで、ウェブページやPDFドキュメントの一部を拡大表示できることだ。

 だが、気に入らなかった点もある。ローンチパッドやミッションコントロールを呼び出すには、親指とほか3本の指でパッドをつかむようにするピンチ操作が必要なのだが、重要な機能を呼び出すには心もとない方法だ。

メール
 アップルのメールアプリは全面的に刷新され、アイパッドのメールアプリに近い見た目と使用感になっている。特に優れた機能の1つが、関連のあるメッセージごとにまとめてスレッド表示できるオプションだ。さらに重複したメールは隠してくれる。

 ほかにも多くの変更点があるが、ここには書ききれない。筆者は最初はこの新しいメール機能を好きになれなかったが、今は好きになり始めている。ユーザーの好みによって、クラシックモードに切り替えて従来形式で使用することも可能だ。

結論
 ウィンドウズ7とスノーレパードは、前バージョンのOSに変更や改良を加えたものといった感じだったが、ライオンは違う。前バージョンから大幅に進化しており、タブレット端末やスマートフォンのような近代的な見た目と使用感をマックで実現してくれる。

 変化をいとわないユーザーにとっては、今あるOSの中で最も優れた製品だ。

(ウォルター・モスバーグは、ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)の「パーソナルテクノロジー」コラム(毎週木曜日掲載)担当の記者。ウォール・ストリート・ジャーナルで40年近く記者および編集者として勤務するほか、米CNBCネットワーク制作のテレビ番組でテクノロジー関連のコメンテーターも務めている)

記者: Walter S. Mossberg
posted at 15:12:13 on 07/22/11 by suga - Category: Apple & Macintosh

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