suga's blog 徒然なるままに
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労働市場の正しい解

経済気象台
労働市場の正しい解

 つい最近まで「定説」と考えられていたのに、今ではその正しさが疑われている事柄が多いような気がする。信用リスクの分散を通じて金融システムを強化すると信じられてきた証券化が、現下の金融危機の最大の要因になっているのは、その一例である。

 労働市場を巡る定説も、その一つだ。

 日本経済が「失われた10年」で呻吟(しんぎん)していた時、終身雇用や年功賃金により硬直化していた労働市場を流動化、柔軟化することが、生産性や競争力を強化するために不可欠だとする議論が広がった。実際、日本企業は規制緩和の後押しを受けて、成果主義の導入や賃金の抑制、正社員の削減、パート・派遣社員の拡大などによって、収益力を高めた。

 低賃金新興国が台頭する中で、雇用の効率化=労働分配率の引き下げがなければ、激しいグローバル競争を勝ち抜けないという恐怖感があったのだろう。しかし中長期的視点でみると、それこそが経済の持続的成長力をそいできたのではないか。

 労働市場は、高賃金・正規労働者と低賃金・非正規労働者に階層化され、所得格差が拡大した。全体として賃金の伸びは抑制され、雇用確保への不安も高まった。名ばかり管理職など、労働市場の公正さをゆがめ、労働意欲をそぐ行為も出てきた。OECDの調査によれば、スペインやイタリアなど、規制緩和によって柔軟度を高めた国で、生産性の低下が観察されるという。その背景には短期雇用者のスキルアップが進まないといった事情があるようだ。

 経済成長の最大の原動力は、ヒトである。にもかかわらず、ヒトを資源ではなくコストとして扱ってきたことのツケが、今になって回ってきたということだろう。(山人)(朝日新聞2008年4月26日付13版金融情報16面)
posted at 13:47:15 on 04/26/08 by suga - Category: Politics

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