suga's blog 徒然なるままに
とりとめのないことを、徒然なるままに、書き留めておこうかと思います。

「有罪慣れ」背筋寒くなった

裁判員時代 語る

「有罪慣れ」背筋寒くなった

 元裁判官の弁護士 安原浩さん

 68年に任官し、広島高裁岡山支部長、松山家裁所長などを歴任。08年6月に定年退官して現在は兵庫県芦屋市に法律事務所を開いている。65歳。

 私は裁判所に勤務した40年間のうち、35年を刑事裁判官として過ごしました。その経験から言うと、いまの刑事裁判で最大の問題点は、裁判官の多くが「有罪慣れ」していることだと思います。

 被告のうち9割は捜査段階で罪を認めます。このため、裁判官は「自白」調書をもとに判決を書くことが多い。「刑事裁判は無罪を発見するためにある」と考えながら、経験を積むうちに「自白調書は基本的に信用でき、強要して作られることはほとんどない」と身につけてしまうのです。

 5年ほど前、連続窃盗事件で起訴された男性被告の審理を担当した時のことです。公判で被告は大半の事件について関与を認めたものの、一部は「やっていない」と否認しました。それでも自白調書があったため、私は彼がうそをついていると考えました。

 ところが、裁判で彼の話を聞いていくと違うことがわかりました。刑事が彼に対し、全く関係のない事件まで「やったことにしてほしい」と頼み込んでいたという供述や、起訴されている事件の一部で真犯人がすでに捕まっていたという記録も出てきました。一部無罪を言い渡しましたが、「私もいつのまにか調書に依存していたのか」と背筋が寒くなりました。

 裁判員制度は日本の刑事裁判を根本的に変えるシステムです。裁判官が起訴事実を否認する被告に「うそをついている」と感じたとしても、市民が事件を懸命に調べることで職業裁判官とは違った判断が出るでしょう。それは冤罪を減らすだけでなく、裁判官の意識改革にも結びつくと思います。(聞き手=佐藤達弥)(朝日新聞2009年6月11日付社会38面14版)
posted at 08:37:39 on 06/12/09 by suga - Category: Politics

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