suga's blog 徒然なるままに
とりとめのないことを、徒然なるままに、書き留めておこうかと思います。

必要な政策生む想像力こそ

必要な政策生む想像力こそ

荻原博子(おぎわらひろこ)さん 経済ジャーナリスト

 54年生まれ。暮らしを応援する視点から、経済を考える執筆活動を展開。近著に「家計破綻に勝つ!」。

 年の瀬というのに大きな人員削減のニュースが相次ぎ、苦しい家計にあえぐ庶民の気分は暗くなるばかりです。どうして首相は、企業のトップに次々と会って「雇用はちゃんと守ってくれ」と言えないのか。自分は国民を代表しているという意識を持っているなら、話し合いの場を持つことくらいできるはずです。

 減収・減益とはいっても、企業はもうけがないわけではない。それなのに、減ったもうけを大量の人員削減をして補うという。働いて暮らしている人たちが、原材料と同じように「調整」の対象になってしまっている。こんなことを、やり放題にさせてはいけない。首相は誰の上にも立つ人のはず。少なくとも企業の上には立ってもらわないと。

 今一番大切なのは、こんな景気の冬をどう生き延びるかということ。そのためには一にも二にも、雇用の確保が必要です。赤字の中小企業をつぶしてしまうのではなく、存続させるようにシステムを変えないといけない。金融庁は銀行への厳しい指導を緩和し、借金の組み直しや返済額の減額に、銀行が応じるように誘導してもらいたい。

 従業員10人の会社がつぶれたら、ざっと40人が路頭に迷う。だから中小、零細企業をつぶさせないことです。給料が半分になっても、かつかつでなんとかしのいで春を待てるようにする。そのための政策を果敢に実行することが、指導者たる首相の役割です。

 そもそも、宰相たる者は、国民を守るという強い意志のもとに政治をするもの。アメリカでオバマ氏が大統領に選ばれたのは、彼の目線が下の方にあったから。みんなを幸せにすることに視点が合っている人七と、人々は感じ取ったのだと思う。

 それでは日本の首相はどうか。庶民に目を向けているとはとても思えない。政策といえば、法人税の減税や雇用の流動化など輸出産業に有利なものばかり、内需拡大に結びつく農業や福祉の産業基盤を強くしていたら、今度の不況でこんなにひどいことにはなっていない。解雇されていく人たちは、政策被害にあったようなものです。

 景気も家計も、今は非常事態です。宰相の力量がこれ以上問われる時はないというのに、首相に決定的に欠けているものがある。それは想像力です。貧乏な暮らしをしている人たちの心持ちは、想像力があればそういう暮らしをしていなくてもわかる。想像力があれば思いやりも生まれ、必要な政策も見えてくる。少なくとも、2兆円をばらまくという、とんちんかんな政策は出てこないはずです。

 理想と情熱があり、庶民の暮らしを一番に考えて行動する。もちろん、利権誘導型の政治は引きずっていない。そういう人こそが宰相にふさわしい。二世、三世ではなく、子育てをしていて、落選経験なんかもあるといい。貸借対照表が読めたらもっといい。

 今の政界は、田中角栄型の政治につかったまま、婚姻などを通じて政財界のなかで結びつきを強めてきた人たちが力を握っている。いわば「貴族政治」なんです。求められる宰相は、「平民」の中にこそいると思います。(聞き手・北郷美由紀)(朝日新聞2008年12月14日付オピニオン9面13版 「08政権選択 耕論 機器の時代の宰相像」
posted at 11:31:28 on 12/14/08 by suga - Category: Politics

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